最新の研究結果が、私たちの常識を覆そうとしています。2025年3月3日、科学誌「Nature Astronomy」に掲載された論文によると、ビッグバンからわずか数億年後の宇宙初期に、すでに水が存在していたというのです。
宇宙誕生の直後に起きた超新星爆発

研究チームが実施したシミュレーションでは、水分子は最初の超新星爆発後に形成され始めたと考えられています。この超新星爆発は、酸素などの重元素を生成する上で不可欠な現象でした。
最初の星が爆発する以前の宇宙には、酸素は存在しませんでした。そのため、水の生成も不可能だったのです。ビッグバン後に残ったのは、水素、ヘリウム、リチウム、そしてわずかなバリウムとホウ素といった、非常に単純な原子核のみでした。しかし、超新星の中心で生成された酸素が水素と結合することで水が誕生し、生命の根源となる元素が宇宙に広がっていったのです。
ポーツマス大学の宇宙学者であり、本研究の筆頭著者であるダニエル・ウェイレン博士は、大学の発表でこう述べています。「ビッグバンからわずか数億年後には、すでに水が存在していたのです。」
2種類の超新星が水の生成に関与

今回の研究では、「コア崩壊型超新星」と「ポピュレーションIII超新星」という2種類の超新星が調査されました。コア崩壊型超新星は、爆発時に重元素を生成し、ポピュレーションIII超新星は、太陽の10倍以上の質量を持つ金属を放出します。これらの超新星は、宇宙空間に水蒸気を含むガス雲を形成することが知られています。
研究チームは、「ビッグバンから1~2億年後の宇宙には、すでに生命の主要な構成要素が存在していたことが明らかになりました。また、シミュレーションの結果から、水が初期の銀河の重要な構成要素であった可能性が高いことが示唆されています。」と述べています。
宇宙初期の「水」発見が示す、生命誕生の新たな可能性

つまり、生命にとって最も基本的な条件の一つである水は、私たちが考えていたよりもはるかに早い時期から宇宙に存在していたということです。これは、初期の宇宙が私たちの想像以上に活発で、生命が存在しうる環境であった可能性を示唆しています。もし、宇宙初期の微弱な光を観測できる装置が開発されれば、生命の歴史や宇宙の進化に対する私たちの理解は飛躍的に深まるでしょう。ウェッブ宇宙望遠鏡をはじめとする観測施設は、初期銀河の形成から構造解明に至るまで、宇宙のタイムラインを解き明かす上で重要な役割を果たすはずです。
地球外生命体は未だ発見されていませんが、今回のシミュレーションのような研究は、生命がどのように誕生したのかを解明するための重要な手がかりとなるでしょう。