米国航空宇宙局(NASA)の探査機「ルーシー」は、小惑星族エリゴネ族に属するC型小惑星「ドナルドジョハンソン」の撮影に初めて成功しました。「ルーシー」は、木星トロヤ群小惑星探査を主要なミッションとしています。

小惑星、ドナルドジョハンソンの撮影に初成功
この小惑星の名称は、1974年に類人猿化石「ルーシー」を発見した人類学者ドナルド・ジョハンソン氏に由来します。直径約4kmと小惑星帯に存在する小惑星としては比較的小型です。NASAが公開した画像には、「ルーシー」に搭載された高解像度モノクロカメラL’LORRIによって捉えられた「ドナルドジョハンソン」(画像右半分の菱形で囲まれた部分)の姿が、微かな光として写っています。

NASAが公開した上記画像は、「ルーシー」から7000万km離れた地点から撮影されました。今後、「ルーシー」は「ドナルドジョハンソン」に接近し、4月20日には960km以内を通過する予定です。960kmは、東京から長崎までの直線距離に相当します。
ドナルドジョハンソンとは
「ルーシー」は2021年10月に打ち上げられ、初期段階で小惑星ディンキネシュとその衛星を観測しました。昨年末には、「ドナルドジョハンソン」への加速のため、地球スイングバイ(重力アシスト)を実施し、速度を時速2万5750km増加させました。
「ドナルドジョハンソン」は主要ミッションへの準備段階に位置づけられますが、興味深い特性を持つ小惑星です。「ルーシー」の公式ミッションサイトによると、約1億3000万年前に発生した大規模な衝突の破片であり、エリゴネ族小惑星群の一員とされています。
今後2ヶ月間、「ルーシー」はミッションの光学航法プログラム(カメラによる天体位置測定と航路の自律調整)の一環として、「ドナルドジョハンソン」の撮影を継続します。
ただし、小惑星の鮮明な画像が得られるのは、4月20日のフライバイ以降となります。それまでは、低解像度の微かな光点として観測される見込みです。
「ルーシー」の今後の航路
「ルーシー」は次に、トロヤ群小惑星エウリュバテスに向かいます。エウリュバテスは「ドナルドジョハンソン」よりも遥かに大きく、直径約64kmです。このフライバイは、トロヤ群小惑星が木星の軌道前方に集積した理由と、その構成要素の特徴を解明する上で重要な情報をもたらします。フライバイは2027年8月12日に実施される予定です。
「ルーシー」は今後数年間で、複数のトロヤ群小惑星をフライバイし、最終的には2033年にパトロクロスとメノイティオスを観測します。
しかし、ミッションはそこで終了するわけではありません。その後も安定した軌道を維持しながら、トロヤ群小惑星の間をフライバイし続ける計画です。本ミッションは、太陽系の形成と進化に関する貴重なデータを提供し、科学的理解を深めることが期待されます。