行方不明の人工衛星、25年ぶりに見つかる

宇宙

1974年に打ち上げられた実験的な人工衛星が、四半世紀もの間、宇宙の迷子になっていた末に、発見されました。この衛星は、1990年代に地球との通信が途絶え行方不明になっていたものです。

発見された人工衛星の正体

今回、25年の歳月を経て再発見されたのは、赤外線較正気球(コードS73-3)と呼ばれる、アメリカ空軍の宇宙試験プログラムの一環として打ち上げられた人工衛星です。1974年4月に画像偵察衛星ヘキサゴン(KH-9)に搭載され、高度800kmの軌道に放出されました。

行方不明になった経緯

赤外線較正気球は、わずか66cmほどの小さな衛星で、軌道上で膨張し、リモートセンシング機器の校正を支援する役割を担っていました。しかし、ヘキサゴンから分離後、展開に失敗。その結果、衛星は本来の機能を果たすことができず、宇宙ゴミとなってしまいました。その後、レーダーによる追跡が行われていましたが、1990年代には完全にその姿を見失い、行方不明となっていたのです。しかし、今年の4月末、米宇宙軍の第18宇宙防衛隊が提供する追跡データによって、ついに再発見されました。

専門家の見解

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天体物理学者、ジョナサン・マクダウェル氏は、この行方不明および発見劇について、取材に対し、次のように説明しています。

「問題は、レーダー反射断面積が極めて小さかったことにあるのではないでしょうか。追跡対象がバルーンのようなもので、しかも展開に失敗していたため、金属部分が露出しておらず、レーダーによる検知が困難だった可能性があります。」

衛星の追跡の難しさ

地球のレーダーとセンサーは、2万以上の宇宙物体を追跡していますが、多くは自ら情報を発信しません。そのため、軌道データとの照合が必要です。航空管制のように、危険な物体の把握が重要ですが、物体が多い、またはデータ更新が滞ると照合は困難です。
静止軌道や予期せぬ動きをする衛星は追跡が特に難しくなります。宇宙ゴミの多くは機能不全衛星や故障部品で、2万7千個を追跡中。McDowell氏は「1つ、2つ行方不明になっても大きなリスクはありません。でも、だからといって行方不明になっていいというわけではありませんね」。とコメントを残しています。