人類が初めて月面に足を踏み入れた1969年、アポロ11号の乗組員が立てた星条旗。その後も、アポロ12号から17号までのミッションで、計6本の旗が月の表面に立てられました。半世紀以上が経過した今、これらの旗は一体どうなっているのでしょうか?
驚くべきことに、アポロ11号以外の旗は、現在も立っているようなのです。
何故、旗の状態がわかるのか?

地球から月までの距離は約38万km。そのため、地球上の望遠鏡で旗の状態を直接確認することは不可能です。そこで活躍したのが、2009年にNASAが打ち上げた月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」です。LROに搭載された高性能カメラは、解像度50cmという驚異的な性能を誇り、月面の鮮明な画像を撮影することに成功しました。その結果、アポロ11号以外の旗が、すべて立っていることが確認されたのです。では、アポロ11号の旗はどうなったのでしょうか?
アポロ11号の旗は倒壊していた

月面は風がない真空状態であるため、旗は吹き飛ばされることなく立っていられると考えられていますが、アポロ11号の旗は、月面着陸船が離陸する際のエンジン噴射によって倒れてしまったのです。これは、月面を歩いた宇宙飛行士、バズ・オルドリンの証言によって明らかになっています。
LROは高解像度の画像を撮影できますが、旗の位置と影から存在を確認しているため、倒れた旗までは判別できません。
旗は白旗と化している可能性が高い

旗は、月の過酷な環境によって、色褪せて真っ白になっていると考えられています。月には大気や磁場がないため、宇宙放射線が常に降り注いでいます。また、昼は110℃、夜は-170℃という極端な温度変化も、旗の劣化を加速させるでしょう。地球上でさえ、黒いTシャツを屋外に干し続けると色褪せてしまうことを考えれば、半世紀以上も月の過酷な環境に晒された旗が、当時の姿を維持しているとは考えにくいでしょう。
旗の正確な状態は、再び人類が月面に降り立ったときに明らかになるはずです。NASA主導のアルテミス計画では、2028年以降に日本人宇宙飛行士2名が月面着陸を予定しています。彼らが、月の星条旗の現状を報告してくれるかもしれません。