科学者たちがこれまで抱いていた火星のイメージは、「岩石惑星だから、おそらく密度は高いだろう」というものでした。ところが、今回、アメリカの研究チームが実際の計算モデルを作成したところ、予想以上に軽いことが判明したのです。具体的に言うと、地球よりも軽いという結果が出ました。
火星の密度が語る真実
地球の地殻の平均密度は2.7グラム/立方センチメートルですが、火星はおよそ2.58グラム/立方センチメートルであると推定されています。「それほど大きな差ではないのでは?」と感じるかもしれませんが、このわずかな差が、火星の歴史を研究する上で非常に重要な意味を持つようなのです。地殻構造の特性を明らかにすることで、その惑星がどのように形成され、発展してきたのかをある程度推測することができます。特に、地殻密度の平均値は、惑星物理学において基本的なパラメーターとなるのです。例えば、地殻の厚さ、地形の成り立ち、そして熱化学的な進化の解明に役立ちます。

つまり、火星の地殻密度が判明すれば、火星の地表がどのように形成され、変化し、現在の姿になったのかといった謎の解明に大きく近づくということです。まるで惑星の精密検査を行うかのようですね。過去に行われた低解像度の惑星重力モデルを用いたシミュレーションでは、岩石惑星の密度は2.7g~3.1g/立方センチメートルという数値が出ていました。しかし今回は、NASAの人工衛星であるマーズ・リコネッサンス・オービターが収集したデータ、重力場モデル、そして表土の成分の推定値に基づいて計算が行われています。その結果、2.58g/立方センチメートルという値が得られたわけですが、これはあくまで推定値であり、不確実性も大きいとのことです。
アリゾナ州立大学の宇宙技術・科学イニシアチブに所属する研究者、タニア・ハリソン氏は、「火星の密度マップを作成したところ、密度には大きなばらつきがあり、地下や火山付近の方が密度が高い可能性が高いことが分かりました。これは、地殻が以前の予想よりも薄く、多孔質であることを示唆しています。」
本研究には直接関与していないハリソン氏ですが、その興奮を隠せない様子でこう付け加えました。「この研究の素晴らしい点は、新たに開発された計算方法にあります。どの天体であっても、重力と地形のデータがあれば、この方法を応用できるのです。」
擬人化してまとめると、火星は見た目よりも軽く、奥深い考えを持っているけれど、ムラっ気のある思春期真っ只中の子供のような存在であることが明らかになったと言えるでしょう。水星や金星も、同じ方法で診断できそうですね。