アメリカの宇宙企業、ファイアフライ・エアロスペースが開発した月面探査機「ブルーゴースト」が、月面をドリルで掘削する様子を捉えた映像が公開されました。
「ブルーゴースト」月面掘削の瞬間
月面に降り立った「ブルーゴースト」
「ブルーゴースト」は、2025年3月2日(アメリカ東部時間午前3時34分)に月面着陸を果たしました。その美しい着陸シーンは、多くの人々の記憶に残ることでしょう。着陸地点は「危難の海(Mare Crisium)」。かつて巨大な隕石が衝突し、その後溶岩で埋められた場所です。
「ブルーゴースト」には、NASAの科学機器が10種類搭載されており、その中には掘削装置「LISTER(リスター)」も含まれています。LISTERは、圧縮ガスを使って月面を掘削し、地下の温度や熱の流れを測定するための装置です。月面着陸の翌日には、最初の掘削に成功し、現在も順調に稼働しています。
「ブルーゴースト」のミッションとは?

「ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ」と名付けられた今回のミッションは、NASAの「商業月探査ペイロードサービス(CLPS)」プログラムの一環です。
このプログラムは、NASAが主導してきた月探査に民間企業の技術を活用することで、コスト削減と効率化を目指すものです。「ブルーゴースト」を開発したファイアフライ・エアロスペース社も、このプログラムに参加している民間企業の一つです。
「ブルーゴースト」は、月面掘削とサンプル採取、X線による月面物質分析、月の塵(ダスト)対策研究などを行います。
過酷な月の環境に耐える「ブルーゴースト」
「ブルーゴースト」の活動期間は、月の1日分。これは地球時間に換算すると14日間に相当します。月では昼と夜がそれぞれ約14日間続くため、「ブルーゴースト」は昼間に活動し、夜になる前に活動を終了する計画です。月の昼間は非常に過酷で、表面温度は摂氏121度に達します。
「ブルーゴースト」は、この高温に耐えるために、電力調整や冷却対策を行っています。その技術力には目を見張るものがあります。
活発化する民間企業の月探査競争

今回の着陸により、ファイアフライ・エアロスペース社は、月面着陸に成功した2番目の民間企業となりました。
最初に成功したのは、2024年2月に着陸したインテュイティブ・マシンズ社の「オデュッセウス」です。しかし、「オデュッセウス」は着陸時に横転してしまいました。現在、多くの企業が月探査ビジネスに参入しており、民間人が気軽に宇宙に行ける時代が近づいています。そこでは、快適性や娯楽性が求められ、新たなビジネスチャンスが生まれるでしょう。そのための研究も活発化しています。
今後も、新しい探査機が続々と月へ向かうことでしょう。新たな発見や美しい光景との出会いに、期待が高まります。