宇宙開発史に新たな1ページが刻まれました。アメリカの宇宙企業、ファイアフライ・エアロスペースが開発した無人月着陸船「ブルーゴースト」が、2025年3月2日、見事に月面着陸を成功させたのです。
この偉業は、民間企業による月面着陸としては世界で2例目となり、宇宙開発の新たな時代を告げる出来事として注目を集めています。先駆けて月面着陸に成功したのは、2024年に打ち上げられたインテュイティブ・マシーンズの月着陸機「オデュッセウス」でした。
民間宇宙企業の月面着陸成功

月面の高解像度画像が公開される
テキサス州に拠点を置くファイアフライ・エアロスペースにとって、今回の月面ミッションは初の試みであり、「Ghost Riders in the Sky(空のゴーストライダー)」と名付けられました。無人月着陸船「ブルーゴースト」は、2025年1月15日にフロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げられました。
45日間の宇宙の旅を経て、3月2日午後5時35分(日本時間)、ブルーゴーストは月の北東側に位置する玄武岩の平原「危難の海(マーレ・クリシウム)」への着陸に成功。着陸後、地球との通信も確立され、ミッションは順調に進んでいます。
ファイアフライ・エアロスペースのジェイソン・キム最高経営責任者(CEO)は、「ファイアフライは文字通り、そして比喩的に月の上空にいます。当社のブルーゴースト月着陸船は今や月面に恒久的な拠点を構えることができました。」と声明を発表し、今回の成功を喜びました。
今後の月面探査計画

探査内容と目的
今後、ブルーゴーストは月の1日(地球の14日間に相当)をかけて、月面の探査活動を行う予定です。この探査機には、NASA製の科学観測機器が10個搭載されており、NASAの商業月面輸送サービス(CLPS)の一環として、将来の有人月面ミッションを支援するためのデータ収集を行います。
NASAによると、探査では月面の地下掘削、表土サンプルの収集、全地球航法衛星システム、月の塵の軽減方法などのテストが行われるとのことです。
皆既月食と日没の撮影
また、3月14日には地球が太陽と月の間に位置し、地平線上の星の光を遮る皆既月食が起こります。ブルーゴーストは、この皆既月食を月から撮影する予定です。さらに、2日後には月面からの日没を撮影し、太陽の影響で月の塵がどのように浮遊するかに関するデータを収集します。太陽が沈んだ後も、着陸機は浮遊する月の塵の画像を撮影し続け、日没後の挙動の変化を観察します。
続々と月へ向かう民間着陸機

現在、他にも2機の民間着陸機が月を目指しています。日本の企業、アイスペースの着陸船「レジリエンス」は、日本の民間企業として初の月面着陸に挑戦します。レジリエンスは、ブルーゴーストと同じスペースX社製のロケットに搭載され、2月15日に月面をフライバイし、4月の着陸に向けて準備を進めています。
そして、インテュイティブ・マシーンズの2機目となる着陸機「アテネ」も2月26日に打ち上げられ、3月6日に月面着陸を予定しています。