宇宙で子孫の残し方|宇宙で生命は誕生するのか?マウス実験が示す可能性

宇宙

遠い未来、人類が地球以外の星に移住する日が来るかもしれません。その時、私たちが直面するのは、空気や水といった基本的な問題だけではありません。宇宙で新たな命を育むことができるのか、という根源的な問いにも向き合うことになるでしょう。

マウスの受精卵を用いた実験

国際宇宙ステーション(ISS)では、この問いに答えるための重要な実験が行われました。研究者たちは、地球で受精させ、初期段階まで成長させたマウスのを凍結し、ISSへと運びました。宇宙飛行士たちは、ISS内でこれらの凍結胚を解凍し、4日間培養するという実験を実施しました。

地球への帰還と分析

培養後、胚は化学的に保存され、地球へと送り返されました。分析の結果、胚は正常な細胞数を持つ胚盤胞へと成長しており、DNAや遺伝子の状態にも大きな変化は見られませんでした。この成果は、人類が宇宙で子孫を残せる可能性を示唆しています。研究結果はiScienceに掲載され、微小重力環境が胚の発達にほとんど影響を与えないことが示されました。New Scientistでは、この研究を率いた山梨大学の若山照彦教授の言葉が紹介されています。「火星への往復には長い時間がかかります。その間に妊娠する可能性も考慮し、宇宙で安全に子供を産めるよう研究を進めています」と教授は述べています。

NASAアルテミス計画では、月面での持続的な活動を経て、火星への有人探査を目指しています。最終的には、長期滞在を可能にする火星基地の建設が目標です。

宇宙放射線が女性に与える影響

一方で、宇宙放射線が女性の生殖能力に及ぼす影響も懸念されています。過去の研究では、宇宙旅行が卵巣内の原始卵胞を破壊する可能性が指摘されています。アルテミス計画では、マネキンを用いて宇宙放射線が人体に与える影響を調査しました。今回のマウス実験は、宇宙で胚が生存できる可能性を示しましたが、まだまだ多くの研究が必要です。4日間の胚の成長は、マウスの妊娠期間の20%に過ぎず、その後の重要な段階については未知の部分が多いのです。

宇宙環境、特に微小重力と放射線の影響を完全に解明するためには、さらなる研究が不可欠です。将来、宇宙で哺乳類が安全に繁殖し、健康な子供を育てられるようにすることは、人類を含む多くの種にとって重要な課題です。

マウスとヒトでは生物学的・生理学的な違いがあるため、マウスでの実験結果がそのままヒトに当てはまるわけではありません。しかし、科学者たちは着実に研究を進めています。