火星ヘリ、着陸失敗の真相は?
2024年1月、火星で前例のない事故が発生しました。火星探査ヘリコプター「インジェニュイティ」が着陸に失敗し、ローターが損傷、飛行不能となったのです。この事故について、NASAが調査結果を発表しました。
未知の環境、限られた情報

インジェニュイティの主任パイロット、Havard Grip氏は、事故調査の困難さを次のように語っています。「1億マイル以上離れた場所での調査であり、ブラックボックスも目撃者もいない。利用できるデータは限られており、複数の可能性が考えられるが、最も可能性が高いのは、火星表面の状態に関する情報不足である」。
インジェニュイティが撮影した画像から、調査チームは、飛行中のナビゲーションシステムのエラーにより、着陸時の水平速度が過剰になったと判断しました。つまり、着陸時に機体が横滑りし、その際にローターが損傷した可能性が高いということです。
宇宙探査の新時代を切り開いたインジェニュイティ

2020年夏に地球を飛び立ったインジェニュイティは、2021年2月に火星に到着。以来、約3年間、火星の空を飛行し続けました。地球以外の惑星でヘリコプターが飛行したのは、インジェニュイティが史上初です。着陸失敗による損傷は残念でしたが、その功績は計り知れません。
インジェニュイティと行動を共にしていた探査車パーサヴィアランスも、相棒の喪失を惜しんでいるかのようです。しかし、インジェニュイティは飛行不能となった今も、搭載された電子機器を通じて火星の気象情報をパーサヴィアランスに送信し続けています。
比較的低コストで開発されたインジェニュイティは、惑星探査ヘリコプターという新たな分野を切り開きました。その経験は、今後の火星探査に大いに役立つことでしょう。